40. デジタル遺言について

2026/09/30

 

 2026年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。本改正では、デジタル技術を活用した新たな遺言方式として、「保管証書遺言」が創設されました。保管証書遺言は、パソコン等を利用して作成することができることから、一般に「デジタル遺言」と呼ばれることもあります。

 これまで、自筆証書遺言は、原則として遺言者が全文を手書きする必要がありました。従前の法改正により、財産目録についてはパソコン等で作成できるようになりましたが、遺言の本文は手書きする必要がありました。デジタル技術の普及により長い文章を手書きする機会が少なくなる中、全文を手書きすることは遺言作成の負担となっていました。本改正により、この負担が軽減されることになります。

 新設される保管証書遺言では、遺言者がパソコン等で作成した遺言の電子データ、またはそれを印刷した書面を法務局に提供し、法務局がこれを保管します。遺言者本人が、法務局において対面またはウェブ会議を利用し、遺言の全文を口述するなど、本人の意思に基づく遺言であることを確認する手続も設けられています。

 もっとも、単にWordやPDFで遺言を作成し、自らのパソコン等に保存しただけでは、有効な遺言にはなりません。法律で定められた方式に従い、法務局の保管制度を利用することが必要です。

 本改正により、これまでよりも遺言作成に取り組みやすくなることが期待されます。一方、遺言の内容が複雑な場合や、相続開始後に紛争となる可能性がある場合には、公正証書遺言を選択することも含め、適切な遺言方式を検討する必要があります。

 なお、保管証書遺言に関する改正は、法務局のシステム整備が必要となるため、公布の日から3年を超えない範囲内で政令で定める日から施行されます。現時点では、保管証書遺言を利用することはできません。

 

 

この記事の執筆者

田中 康敦
Y&P ファミリービジネスコンサルティング
田中 康敦

弁護士法人Y&P法律事務所 パートナー
弁護士・民事信託士