21.成年後見制度の改正と民事信託への影響

2026/01/30

 法制審議会において、令和6年からこれまで、成年後見制度に関する法改正が検討されていました。令和8年1月、要綱案の取りまとめが行われました。来年度にも民法改正となる可能性があります。

 今回の検討における大きな特徴は、従来の「後見・保佐・補助」という三類型を再編し、補助の一類型に集約を行ったことです。その上で、本人にとって必要な支援のみを柔軟に利用できる制度へと転換を目指しているようにみえます。具体的には、現行の成年後見制度における「補助」を中心とする構造に整理し、代理権や同意権を個別に設定する制度設計を念頭に置いているようです。

 もう一点、成年後見の終了についても検討が進んでいます。現行制度では、成年後見が一度開始されると、判断能力の回復等がない限り終了が困難でした。そのため、遺産分割などの必要性に迫られたとしても成年後見を開始することに抵抗感があるケースもありました。法制審議会の資料によると、支援の必要性が失われた場合には、代理権や同意権を取り消す判断ができる仕組みを設ける方向性が示されています。

 終了に関する法制審議会での議論を受けて、「成年後見制度が柔軟になるのであれば、家族信託や民事信託の必要性は後退するのではないか」という質問を受けることがあります。私見では、現時点では慎重に評価するべきと考えています。

 まず、終了要件やその運用がどこまで明確になるかはなお不透明といえます。法改正による新しい条文の規定だけではなく、実際の家庭裁判所の運用にも大きく左右されることになるからです。終了が可能な制度であることと、使い勝手の良い制度になることとはイコールになるものとは言えません。

 第二に、信託は、受益者連続型信託や帰属権利者の指定により、いわゆる遺言の代用機能も有しています。この点は、成年後見制度の改正とかかわりなく、信託固有の強みになります。すなわち、認知症対策としての財産管理にとどまらず、相続・事業承継・資産承継まで見据えた設計を可能にする点で、後見制度とは異なる役割を担っていくと整理することができます。

 成年後見制度の見直しは、本人の自己決定権を重視するものであり、実務の広がりを期待できるものとなるでしょう。だからといって、現時点において、資産管理の支援手法が単線化するとまでは言えません。今後も、成年後見制度、任意後見、信託等を使い分け、適切に組み合わせる発想が重要になります。

この記事の執筆者

田中 康敦
Y&P ファミリービジネスコンサルティング
田中 康敦

弁護士法人Y&P法律事務所 パートナー
弁護士・民事信託士