34.長期的な事業承継計画の策定と成功の鍵~視座を高め、視野を広げる大切さ~

2026/07/01

 

事業承継とは、スリーサークル(ビジネス・オーナーシップ・ファミリー)のあらゆる課題を乗り越えた先に、初めて形になるものではないでしょうか。

 

 ・ビジネス:経営戦略と資本の整合性を取り、勝てる事業構造を磨く。
 ・オーナーシップ:目に見えない資産価値観・信頼・ブランドを承継する。
 ・ファミリー:世代を超えて機能するファミリーガバナンス体制を築く。

 

これらは「計画を立てれば数年で解決」という性質ではありません。むしろ、経営者と後継者が長期にわたり対話し、信頼を積み重ねながら少しずつ形にしていく営みです。

 

事業承継計画の核心は、後継者が生まれ持った地位と、自らの努力で獲得する地位とのギャップを埋めることにあります。(落合康裕教授の『事業承継のジレンマ』より)そのために経営者は、後継者が挑戦できる組織と環境を整える。一方、後継者は、自らのチームを築き、経営戦略を具現化しながら信頼を獲得する。

  この相互作用を経て、初めてバトンが渡されます。

 

ここで番頭の出番です。後継者が試練に直面した時、それを「機会」に変える支えとなる。番頭は覚悟をもって後継者と運命共同体となり、試練の数を機会の数に変える中で「真の相性」が育まれます。

 

私の経験では、番頭は育成してつくるものではなく、経営者の夢と本気度に惚れ込み、自然に現れる存在です。だからこそ、経営者は「惚れられるだけの志」と「覚悟」を、後継者は「惚れられるだけの成長力」を示す必要があります。

 

あなたの会社では、後継者と番頭、そしてファミリーが同じ未来図を描く準備ができていますか?それを今日から始めることこそ、長期的な事業承継計画の第一歩です。

経営学者・落合康裕の視点

 

長期の事業承継計画の目的は、人を育てるためではなく、人が育つ環境を作ることです。事業承継計画とは、後継者の配置計画(承継に向けてどのような部門にどのタイミングで配置するのか)と次世代経営チームの組織化(後継者の右腕の選抜と配置)が主要なミッションとなります。

後継者には、将来の経営者としてのマニュアルの遵守ではなく、困難に直面した際に自ら問題解決を図ることが求められます。右腕人材(将来の番頭候補)も同様で、実践の厳しさの中で後継者との阿吽の呼吸を学び取らねばなりません。この阿吽の呼吸は、長期間にわたって当事者たちが能動的に感じ取ろうとする姿勢なくして築くことはできません。あえて、先代の経営者や番頭ができることがあるならば、勢いよく発芽した芽を立派な枝ぶりに導くことです。

その意味では、後継者も次世代の番頭も義務教育システムで育てられるものではなく、そのような人物が出現できる仕掛けや環境整備が求められます。

この記事の執筆者

加藤 隆一
加藤 隆一

ロマンライフ専務取締役・番頭

落合 康裕
落合 康裕

静岡県立大学教授