28. ファミリービジネスの特徴

2026/04/30

 近年、世界的に再評価されつつあるファミリービジネスであるが、しばらく前まではそうではなかった。特に日本では、企業の私物化や経営者の暴走などファミリービジネスの負の側面が強調されてきた時代もあった。

 しかし、中小企業の大半がファミリービジネスであるし、上場企業でも創業時は一族個人所有経営形態の企業であった。ファミリービジネスを知ることは、企業組織の特徴(発展形態)を理解することに他ならない。

 よく指摘されるファミリービジネスの欠点として、経営の公私混同や身内への甘い処遇がある。これらは、非一族にとって仕事意欲を減退させてしまうし、組織の秩序を保ちにくい。他方、独断的な意思決定のような欠点は、公式的な決定プロセス(稟議プロセス)を経ることを前提にして考えると、経営判断が早いというメリットも生み出す。また、経営者に頼りがちになるという欠点は、一族が所有経営者であるからこそ経営が自分ごとになりやすく、会社存続への危機感が高くなるというメリットを生み出すことにもつながる。

 

図 ファミリービジネスの強みと弱み

 

 

強み

・経営判断が早い

・決定事項の実行が早い

・会社存続への危機感が高い

・長期的な経営戦略が立てられる

・会社の負債等ファミリーだから任せられる

 

 

弱み

・公私混同がある

・社長に頼りがちになる

・独断的になる

・社内の公平感が阻害される

・身内に甘くなる

(出所)後藤編(2012)の図表1-6および図表1-7を引用のうえ、筆者作成。

 

(実務上のポイント)

 上記を踏まえると、ファミリービジネスの利点と欠点は、表裏一体のものである。実務上は、その特質を踏まえ、欠点を利点に転化できるようなサポートが必要である。例えば、後継者の育成の場合、将来の経営者昇格に備え早い昇進をさせていかねばならない。その際、他の従業員と同じ昇進経路を取るのではなく、プロジェクトリーダーや新規事業、海外法人などに配置し、同期社員と比較可能なトラックに乗せないキャリア形成を行う工夫が挙げられる。

 他にも、非一族出身の経営幹部を番頭として取締役に登用することによって、経営に参画させるようなことも有効である。非一族でも経営に参加できる希望を与えるとともに、非一族の番頭が非一族の従業員の総意を代表することができれば経営意思決定に非一族の意向を届けることもできる。

(参考文献)

後藤俊夫・嶋田美奈(2012)『ファミリービジネス:その知られざる可能性』白桃書房.

後藤俊夫(監修)・落合康裕ほか(企画編集)(2021)『ファミリービジネス白書2022年度版:未曾有の環境変化と危機突破力』白桃書房.

この記事の執筆者

落合 康裕
落合 康裕

静岡県立大学教授