27. 一族会議における番頭の役割 ~事例を鵜呑みからオリジナルへの昇華~

2026/04/30

 ファミリービジネスの永続性を左右する大きな要素が、ファミリーガバナンスです。多くの文献では、ファミリー総会(家族全員で集まり、意志決定・教育・親睦を図る場で、企業でいえば株主総会)と、ファミリー評議会(選任された代表が議論・意思決定を行う場で、企業でいえば取締役会)という2層が基本構造として紹介されます。しかし、実際の現場に寄り添っていると、この2層だけでは十分に機能しないことが多い。

 そこで私が提案し、伴走してきたのが「家族会議」という中間層の設置です。たとえば、ある創業家では、事業承継が順調に進み、ファミリーの絆も深まっていました。そこで、総会や評議会での議論をより有意義にするため、毎月1回、8名(先々代・先代ご夫妻、後継者夫妻、番頭である私と後継番頭)で家族会議を開催。総会前の準備段階として、ファミリーの意志や価値観を整理し、実のある議論につなげています。さらに、年2回の親睦会には次世代の家族も加わり、関係の広がりと深まりを意識的につくっておられます。

 こうした場の価値は、「誰かが決めた形式をなぞることではなく、自分たちの歴史や文化を活かし、独自のかたちをつくること」にあります。番頭の役割は、まさにここにあります。外部の事例や専門家の助言を鵜呑みにするのではなく、「我が家ならではのスタイル」に昇華させるための設計者・伴走者となること。

 もしあなたの会社にも「形式だけの集まり」や「声の大きな人だけが決めてしまう会議」があるなら、一度立ち止まって問いかけてみてください。『この場は、私たちの未来につながっているか?』『本音が言える、戻れる場となっているのか?』

 番頭が介在し、家族が本音で対話できる場があれば、ガバナンスは生きたものになります。ファミリーの独自性をどう活かすか。それを考え続けることこそが、次世代への最大の贈り物ではないでしょうか?

経営学者・落合康裕の視点

 ファミリーガバナンスの目的は、一族や一族事業の永続化に向かって、一族間の利害調整とともに一族の団結力を高めることです。経営サイド(株主総会や取締役会など)とのコミュニケーションを円滑にする取り組みでもあります。他方、一族の会議ではメンバーの情緒が複雑に絡み合い、一族の一体感を作り上げることが時に難しい場合もあります。ファミリービジネスの世代が進み、関与するメンバーが増えるとなおさらです。

 仮に、公式的な一族会議体で機関決定を行ったとしても、実は方針に納得できていないメンバーや立場的に声を上げにくいメンバーを取り残してしまうこともあります。各々の立場を超えて、何度でも率直な意見交換ができる非公式な場を設置し、適切に一族のガス抜きができる仕組みを用意しておくことが重要です。一族の結束が揺らぐと、一族の価値観が経営サイドに反映されにくくなり(一族の形骸化)、ファミリービジネスの経営に支障をきたす可能性もあります。

この記事の執筆者

加藤 隆一
加藤 隆一

ロマンライフ専務取締役・番頭

落合 康裕
落合 康裕

静岡県立大学教授