日本のファミリーガバナンスを考える上で、ドイツの議論は極めて示唆的です。2004年、ドイツにおいて、「GOVERNANCE CODE FOR FAMILY BUSINESSES」が策定されました。有識者により構成されたファミリービジネスのガバナンス・コード委員会により改定等が行われており、現在は第4版となっています。
多くの場合、ガバナンスコードは法令のような強制規範ではありませんが、ファミリー憲章を策定し、株式の譲渡・退出ルールなどの重要なルールを明確化したり、任意の機関(ファミリーオフィス等)を設置したりすることで、紛争予防の効果を期待できます(なお、ドイツにおけるファミリービジネスのガバナンスコードについては、今月のセミナーで取り扱います)。
ドイツのガバナンスコードを知ることは、日本におけるファミリービジネスのガバナンスコードを考える上でも有益です。例えば、株式の移転に関するルールの整備は、日本においても重要なトピックとなります。会社や家族の歴史、背景によって決めるべき内容は異なります。シンプルに、遺言などの資産承継の準備を進めることを定めるだけで足りるケースもあれば、家族関係が複雑になっており、受益者連続型信託を用いて、数代さきまで株式の承継者を指定することが有効な解決策となるケースもあります。事例に応じたルール策定を行い、そのルールを実施するための仕組み作りを行っていくべきです。
特に、退出時の株式評価方法は、事前の紛争予防の観点から重要なポイントです。重要なポイントであるからこそ、可能であれば、法的拘束力を設定するところまで踏み込んだガバナンスの設計が望ましいです。信託を用いる場合、株式の評価方法、対価の支払い条件、方法などを信託条項に織り込み、受託者に退出時のプロセスを実行させることができます。
ドイツのガバナンスコードなど先例的な事例から、ファミリーガバナンスの重要なトピックを抽出し、そのトピックを日本の法制度でどのように実現するべきか、今後も検討の余地があります。
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