20.~国際相続・事業承継最前線~ 「ファミリービジネスにおけるクロスボーダーの税務の論点を考える」 ファミリービジネスと国際相続・資産税

2026/01/30

③ ミニマムタックス課税の改正

 2023年度の税制改正において、いわゆるミニマムタックス課税がルール化されました。正式名称は「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置について」と少々物々しいものですが、単年の所得が概ね30億円を超える個人の方でその所得の内容が不動産の譲渡や有価証券等の譲渡である場合には、改正前よりも多く所得税を負担することになりました。適用開始は2025年分の所得税申告からですので、今年3月(20263月)に提出する確定申告から、このルールに基づく追加の税金を計算することになります。

 ところが、昨年末(2025年末)に発表となった2026年度の税制改正大綱では、始まったばかりの、このミニマムタックス課税のルールがさらに厳しくなり、今度は所得が概ね10億円を超えるケースから追加の税負担がかかる制度に変更となる予定です。

④ 国外転出時課税制度との関係

 一方で、国外転出時課税制度の適用をうける場合も、ミニマムタックス課税の影響を気にする必要があります。国外転出時課税制度は、日本から出国する方が出国時点で保有する全ての有価証券等を「売ったものとみなして」算出した譲渡所得に15.315%の税率で課税される制度ですが、日本から出国する時点で保有する有価証券等のみなし譲渡所得金額が大きい場合には、ミニマムタックス課税も合わせて適用を受ける可能性がでてきます。

 これは相続により、海外にすんでいる相続人等が有価証券等を相続する場合の国外転出時課税制度の適用についても同様です。今回のミニマムタックス課税の改正の影響は、富裕層にとっては明らかに増税です。さらには、海外居住地国の税法や法律、また当該居住地国と日本との租税条約等もかかわってきますので、ファミリービジネスにおけるクロスボーダーの論点整理は、ますます複雑になってきました。

この記事の執筆者

田場 万優
Y&P ファミリービジネスコンサルティング
田場 万優

税理士法人山田&パートナーズ パートナー
税理士