19. ドイツ研究滞在紀行(3):Uerigeにみるアルトビールの製造プロセスと品質思想

2026/01/30

 Uerigeは、アルトシュタット地区を象徴するブルーパブの一つである。1862年創業の同社は、ファミリービジネスとして160年以上にわたり事業を継続してきた老舗醸造所であり、「妥協のない品質」を理念として掲げている。同社のアルトビールは、琥珀色から黒褐色の外観と強いコク、苦味を特徴とし、「最も美しいアルト」とも称されている。その品質の背景には、原材料調達から製造工程に至るまでの一貫した思想がある。

 

 Uerigeの品質思想は、まず原材料調達の段階に表れている。同社は、大麦や醸造用小麦を農家から直接仕入れており、原材料の出所と品質を自ら管理している。原材料の品質を自ら管理する姿勢は、ビール純粋法(1516年制定)の精神を現代的に体現するものといえる。発芽させた穀粒を乾燥させる工程が、アルトビールの風味を決定づける重要な段階とされており、この工程に長年蓄積されたノウハウが凝縮している。このような長期的に構築された設計思想は、他社に容易に模倣ができるものではない。

 

写真 Uerigeのオープンテーブルでの昼下がり

画像3

(出所)筆者撮影

 製造工程においては、伝統的な上面発酵が採用されている点が特徴である。現在主流となっている下面発酵(ラガービール)とは異なり、上面発酵は温度管理や時間管理に高度な技術を要する。アルトビールにおける「アルト(古い)」という名称は、古い製法を守り続けていることを意味しており、決して品質が古いという意味ではない。こうした工程を経て製造されたビールは、ボトリングされるか、併設レストランで提供され、製造と消費が密接に結びついている。このようにUerigeの品質は、単一の技術ではなく、長年にわたり磨かれてきた工程全体の積み重ねによって成立しているといえよう。

(参考文献)

Uerigeホームページ(アクセス日:2025/12/18https://www.uerige.de/en/

この記事の執筆者

落合 康裕
落合 康裕

静岡県立大学教授