23. ドイツ研究滞在紀行(4):アルトシュタット地区のビジネスシステムによる競争優位

2026/03/03

 アルトシュタット地区のブルーパブの競争力は、アルトビールの味や色合いといった商品特性だけでは説明できない。本研究では、仕入・製造・出荷・サービスを一体として捉えた「ビジネスシステム」の差別化が、持続的競争優位の源泉である。

 

 Uerige(1862年創業)を例にとると、産地直送の原材料調達、上面発酵を核とした製造工程、ECや小売店への出荷、そして自家醸造酒場での提供が有機的に連動している。特に併設レストランは、単なる販売チャネルではなく、ライン川沿いの穏やかな時間や地域の雰囲気を体験として提供する場となっている。アルトシュタット特有のビール提供方法も、サービスの一部として特徴づけられている。ウェイターが定期的にビールを運び、コースターで杯数を管理する仕組みは、効率性と文化的体験を両立させており、特に外国人観光客にとって印象的な体験価値となる。顧客がコースターをコップの上に置くことによって、これ以上追加のビールが必要ないという意思表示をする仕組みになっている。 

 

 写真 代表的ブルーハブのUerigeの夜の外観 

画像4

(出所)筆者撮影

  このようなビジネスシステムの差別化は、顧客にとって明示的に見えにくく、模倣が困難である。そのため、加護野(1999)が指摘する「目に見えない差別化」に該当し、長期的な競争優位を形成していると考えられる。また、アルトビールとケルシュビールの地域間競争に象徴されるように、ドイツのビール醸造業は地域ごとの緊張関係を通じて、互いの独自性と品質を高め合ってきた可能性が示唆される。ドイツのビール産業における地域間競争については、今後の研究活動で探索してみることにしよう。 

(参考文献)

加護野忠男(1999)『競争優位のシステム: 事業戦略の静かな革命』PHP出版.

Uerigeホームページ(アクセス日:2025/12/18)https://www.uerige.de/en/

この記事の執筆者

落合 康裕
落合 康裕

静岡県立大学教授